斜底面ケーソン式係船岸は、堤体となるケーソンの底面に勾配を設けることが特徴であり、底面の陸側を深くすることにより、背後土圧や地震力に対する滑動抵抗力を増大させることができます。従来のケーソンより堤体幅を狭くすることができるため、特に地震による外力の大きい耐震強化岸壁の建設費を縮減することが可能な画期的な技術です。
斜底面ケーソン式係船岸は、和歌山県の日高港の岸壁(-12m)で採用しています。
上部パイラー形式防波堤は、日高港の防波堤(西)で適用しています。
低コストで耐震強化を実現した新工法
通常の重力式岸壁に使用するケーソンに比べ、同じ設計震度でも、ケーソン幅を小さくすることができます。特に、設計震度が0.25以上必要となる耐震強化岸壁において、大きな効果が期待できます。
ケーソンの堤体の小型・軽量化とそれによる軟弱地盤の改良幅の縮小により、全体コストの縮減が可能です。
構造自体は、従来型のケーソンとほぼ同じであり、従来の施工方法で充分対応できます。
ケーソン堤体に作用する全水平力Hと全鉛直力Wを、傾斜させたケーソン底面に垂直に方向の力Nと平行方向の力Sに分解し、滑動安全率Fsを計算します。
底面傾斜角θを大きくすることによりケーソン堤体を滑動させる底面に平行方向の力Sは減少し、滑動に抵抗する底面垂直方向の力Nは増加するため、滑動安全率Fsは格段に向上します。
ケーソン堤体の底面傾斜角θを大きくするに従い、地盤反力が大きくなります。軟弱地盤上に構築する場合は、その反力に耐える支持力を確保するため、底面の傾斜角を長期的に維持できる堅固な地盤に改良することにより、斜底面ケーソン工法の効果を最大限に発揮させることが出来ます。