根入れ式鋼板セル防波堤は、鋼板を溶接して一体化した円筒体(鋼板セル)を海底地盤に直接打ち込んだ後、鋼板セル内の空間に、砂や石などを中詰めすることで堤体とする方法でつくられる防波堤であり、軟弱層が厚く堆積している場合や、土捨て場が確保できない場合にも適用できます。
防波堤の新技術
セルの天端を-0.9mに低く抑え、その上に階段状の上部工を設置することにより、円形鋼板セルの特徴を活かした波の回折と砕波による新たな消波機能を持ちます。
護岸・岸壁では、鋼板セルの板厚は、中詰土圧により発生するセル殻のフープテンションに対する検討によって決定されています。一方、防波堤では衝撃的な波圧が中詰土圧の小さいセル上部に作用し、鋼板が損傷することが考えられます。そこで、上部の鋼板を二重にすることで、セル上部の剛性を高めて、波圧に対して安全な構造を実現します。
山崎らの研究(港研報告vol.30(1991)に従い、波の繰り返し荷重による粘性土の強度低下を評価し、堤体の安全性を検証しました。
今回本研究を初めて適用し、設計手法を確立しました。本手法は、軟弱地盤上に構築される防波堤に広く適用できるものといえます。