技術開発・設計

根入れ式鋼板セル防波堤

根入れ式鋼板セル防波堤のイメージ図
根入れ式鋼板セル防波堤のイメージ図

根入れ式鋼板セル防波堤は、鋼板を溶接して一体化した円筒体(鋼板セル)を海底地盤に直接打ち込んだ後、鋼板セル内の空間に、砂や石などを中詰めすることで堤体とする方法でつくられる防波堤であり、軟弱層が厚く堆積している場合や、土捨て場が確保できない場合にも適用できます。

防波堤の新技術

根入れ式鋼板セル式防波堤の特徴

  • 地盤改良によって発生する盛上土を堤体の一部として活用することにより、土砂処分量をゼロにすることができます。
  • 盛上土の撤去が不要であるため、盛上土を撤去する際の濁りの発生を防ぐことができます。
  • 鋼板セル間を連結するアークを海底付近に留め、鋼板セルの間に1.5m程度の間を空けることができるので、所要の港内静穏度を確保しつつ、併せて海水交換機能も確保できます。
  • 従来型の防波堤に比べ、基礎マウンドの造成が不要となるため、急速施工が可能です。
根入れ式鋼板セル防波堤のイメージ図

根入れ式鋼板セル式防波堤の基本原理

基本原理(1)
波の回折を利用した独創的な多段消波機能

セルの天端を-0.9mに低く抑え、その上に階段状の上部工を設置することにより、円形鋼板セルの特徴を活かした波の回折と砕波による新たな消波機能を持ちます。

消波機構の図説
セル上部合成構造のイメージ図
基本原理(2)
セル上部合成構造

護岸・岸壁では、鋼板セルの板厚は、中詰土圧により発生するセル殻のフープテンションに対する検討によって決定されています。一方、防波堤では衝撃的な波圧が中詰土圧の小さいセル上部に作用し、鋼板が損傷することが考えられます。そこで、上部の鋼板を二重にすることで、セル上部の剛性を高めて、波圧に対して安全な構造を実現します。

セル上部合成構造のイメージ図
基本原理(3)
波の繰り返し鋼板荷重に対する堤体変位の検証手法の確立

山崎らの研究(港研報告vol.30(1991)に従い、波の繰り返し荷重による粘性土の強度低下を評価し、堤体の安全性を検証しました。

今回本研究を初めて適用し、設計手法を確立しました。本手法は、軟弱地盤上に構築される防波堤に広く適用できるものといえます。

波の繰り返し鋼板荷重に対する堤体変位の検証手法の解説図

施工事例:和歌山下津港 北港地区 防波堤(南)

製作した鋼板セルを上空から見たところ。巨大な筒状の構造物で中は空洞。
鋼板セル製作完了
大型起重機船でセルを吊り込み据え付け位置まで運搬します。
鋼板セルの運搬
海底地盤へセルを打ち込みます。
鋼板セルの打設状況
少し離れた場所から見た防波堤。水面下の特殊な構造は外からは一切見えません。
防波堤の工事状況
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