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尼崎西宮芦屋港

いつも、みなとと共に
辻田忠弘(甲南大学大学院自然科学研究科 情報・システム専攻 教授 医学博士)

 
メリケンパーク
私は「みなと」が好きだ。硬い感じの「港」・「港湾」やハイカラで洗礼された「ミナト」・「ハーバー」や詩的な「浜辺」・「渚」も良いが、哀愁をおび多少泥臭い「みなと」や「波止場」が好きだ。

はしけや漁船の舟溜まり場がよい。「みなと」の片隅に魚市場があり、捕りたてのうまいさかなを食わせる食堂があれば更によい。無口でがんこで腕の良いおやじがいて、おふくろのようなやさしいおかみが灘のうまい酒を出してくれたら「神戸うまいもん探偵団」副団長の私にとっては最高である。わが青春の「神戸のみなと」には各々の場所は多少離れていたが、すべてが揃っていた。

「はしけ」留まりのメリケン波止場ほど青春の不満やいらいらを和ませてくれるところはどこにもなかった。小さな舟体で大きな舟を何艘も引っ張り、ゆっくりと進む「はしけ」は力強く、勇気を与えてくれ、うつくしい。「ポンポンぽんぽん…」という腹までしみる音もよい。「ボー」という遠慮がちな汽笛もよい。

甲南大学に入学して美術部に入り、油絵を始めた時に最初に写生したのもメリケン波止場の「ポンポン舟」である。その後、抽象画に変更して2年生の時には岡本太郎・東郷青児や吉原二郎の「二科展」に入選し、その後も抽象画を描き入選を続けた。絵画の創造力が学問の創造力につながると、大学の助手に推薦された時の教授の条件が「絵画の道」を取るか、「学問の道」を取るかの選択であった。「学問の道」を取り、絵画は諦めた。

その後、30年近くが過ぎ、教授も退職され、亡くなられ、私も博士の学位をとり、大学の教授から大学院で博士号を出せる教授になったのを機会にチャーチル会に入り、日曜画家として具象画を始めた。そして、最初に描いたのがここに掲載した神戸港の「はしけ」である。

その後、「経営情報システム」から「感性情報処理」に研究テーマを広げて、絵画にある「なぞ」の解明に取り組み、オランダの画家フェルメールに関する数本の論文を学会で発表した。それが縁で、今年の初めにNHKからフェルメールの「絵画芸術」が日本に来るのでその絵画の「なぞ」の解明を依頼され、その結果が、6月6日の「新日曜美術館」で放映された。

それを機会に今年の「二科展」に43年ぶりに抽象画を出品して入選した。来年は具象画の出品を考えている。テーマは「みなとと舟」にして、その中に「おんな」を入れてみたい。また、すてきな「舟とおんな」を求めて、スケッチブックを持って「みなと」に出向く日が多くなると思う。変化のはげしい神戸の新しい「みなと」には、また、新しい魅力と驚きが私を待っていてくれると思う。私は「おんな」が好きだ、いや「みなと」が好きだ。

 
辻田忠弘 プロフィール
辻田忠弘(つじた ただひろ)
甲南大学理学部教授。甲南大学理学部卒業。南カリフォルニア大学大学院経営学部終了。医学博士(大阪大学)。
 
 
 

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